海外で収入を得た場合の税金は、どこへ支払う必要があるのかなあ?
海外で収入を得ると税金をどこへ払えばいいのか。
海外移住をして生活をする上で、税金の問題は切っても切り離せません。
個人の状況や収入、移住する国にもよって異なる税金の問題はとても複雑です。
今回は『海外で収入を得た場合の所得税など税金(確定申告・源泉徴収)』について
できるだけわかりやすく解説をしていきます。
海外移住者も『源泉徴収』『確定申告』が必要?
海外移住をした場合も住民票を残したまま移住する『居住者』と、住民票を抜いて移住する『非居住者』、
属している会社が『国内法人』なのか、『国外法人』なのか、
または『就職をせずに個人事業主(フリーランス、自営業)として働く』のかなどによって
それぞれ『確定申告』『源泉徴収』が必要なパターンが異なります。
『確定申告』『源泉徴収』の違い
まずは『確定申告』と『源泉徴収』の違いについて確認をしておきます。
確定申告とは
『確定申告』とは、年間の収入から経費等を差し引いて所得を算出し
そこから納める税金の額を計算して、税務署にその結果を報告するの手続きのことです。
所得税や消費税の他、法人税の確定申告があります。
『個人事業主』の方は、所得税の確定申告が必要です。
源泉徴収とは
『源泉徴収』とは、年間の所得にかかる税金(所得税)を会社(事業者)が給与からあらかじめ差し引くことです。
年に一度、『年末調整』という形で従業員が納めるべき1年間の所得税と
従業員の毎月の給与や賞与から控除した所得税額を比較して、
所得税額の過不足を調整する簡単な作業を行う必要がありますが
会社が毎月の源泉徴収、従業員が年に一度の年末調整をすることで
従業員は確定申告をする必要がありません。
『居住者』『非居住者』の定義
次に『居住者』『非居住者』の定義について確認をします。
居住者とは
国内に『住所』を有する、または、現在まで引き続き1年以上『居所』を有する個人のことを指します。
非居住者とは
『居住者』以外の個人のことを指します。
要するに住民票を抜いた場合は『非居住者』として扱われます。
『海外移住で住民票を抜くメリット・デメリットと方法』については以下の記事をご確認ください。
確定申告・源泉徴収の有無
確定申告・源泉徴収の有無について、それぞれのパターンごとに確認をしていきます。
国内法人
以下の場合は『日本法人で雇われている場合』と『日本で法人を立ち上げた場合』同じことが言えます。
『日本国内法人』×『居住者(住民票抜かず)』
住民票を抜かずに日本国内の法人に属しながら海外に移住をした場合は
これまで通り、会社に源泉徴収をされるという形になります。
『日本国内法人』×『非居住者(住民票抜く)』
住所を抜いた場合でも、日本国内の法人に属しながら海外に移住をした場合は
これまで通り、会社に源泉徴収をされるという形が多いです。
日本で発生させている所得にのみ納税をする必要があります。
しかし国内に住所がなくなると、住民税を納める必要はなくなります。
またお住まいの国によっては長期(183日以上)で滞在する際には、
日本から所得を得ている場合も、現地の税制に従う必要がある国もあります。
こちらに関しましては、後ほど解説をします。
国外法人
以下の場合は『海外法人で雇われている場合』と『海外で法人を立ち上げた場合』同じことが言えます。
『国外法人』×『居住者(住民票抜かず)』
住民票を抜かずに、国外企業と雇用契約を結んでいる場合
海外からの給与とはなりますが、国内に住所があるため
外国企業からの給与に対しても日本国内で確定申告をする必要があります。
しかしこの場合、給与を支給してもらっている現地の国でも所得税などの税金が課税されている可能性があります。
その場合、外国と日本で給与所得に対して二重に税金が引かれているという状況になります。
国によっては『租税条約』という形で、二重課税の排除や租税回避の防止などを目的に条約が締結される場合があります。
二重課税による納税者の負担を軽減するために、『外国税額控除』というものが適応され
収入に対して、一定の金額を所得税の計算上の所得から控除することができます。
『国外法人』×『非居住者(住民票抜く)』
その国の税制に従って税金を納める必要があります。
個人事業主(フリーランス・自営業)
法人を立ち上げずに、個人事業主として働く場合のパターンです。
『個人事業主』×『居住者(住民票抜かず)』
【外国でレストランなどをオープンし、その国で所得を得る場合】
日本に住民票を残しながら海外で事業をするとなると、
日本に住みながら、海外で収入を得ているということなので日本での確定申告が必要です。
二重課税の対象となってしまう可能性があります。
【フリーランスとしてリモートワークなどで、日本で所得を得る場合】
日本に居住しながら、日本で収入を得ているという扱いになるので
日本で確定申告をし、税金を納める必要があります。
日本への住民税も納める必要があります。
確定申告の際、お住まいの国によっては現地の税制に基づいて
二重課税の対象となってしまう可能性もあります。
『個人事業主』×『非居住者(住民票抜く)』
【外国でレストランなどをオープンし、その国内で所得を得る場合】
その国の税制に従って税金を納める必要があります。
【フリーランスとしてリモートワークなどで、日本内で所得を得る場合】
こちらも基本的には、日本で発生させている所得にのみ納税をする必要がありますが
お住まいの国やその国の滞在期間によっては、二重課税の対象となってしまいます。
日本への住民税は納める必要はありません。
『180日ルール』について
海外に居住する場合、年度の1月1日〜12月31日の期間中に『183日以上』その国内で滞在している人は
住民票を抜いていない場合でもお住まいの国の『居住者』として扱われ
所得に対してその国での税制に従って確定申告をし、所得税を納める必要があることが多いです。
これも先ほども触れた『二重課税』となってしまいますが、
一度その国で所得税を納め、日本に帰国後に外国税額の控除を受けることができます。
タイではどうなのか
ここまでは全体的な海外のお話をしましたが、『タイの税制』はどうなっているのでしょうか。
タイの個人税
タイにおける個人税は『所得税』のみです。日本のように『住民税』のようなものはありません。
タイの個人所得税は日本同様、『累進所得税制』で徴収をされる仕組みとなっており
累進課税の最大税率は35%となっています。
租税条約
日本とタイは、『日本の所得税と法人税』『タイの法人所得税、個人所得税、石油所得税』に対して
租税条約を結んでいます。
税金については、条約に基づいてどちらの国が課税するかが明確にされており
二重課税排除の制度が設けられています。
180日ルール
タイでも180日ルールが適応されるため
183日以上の滞在となると、タイで確定申告をして税金を納める必要があります。
先ほども記載した通り、タイと日本は二重課税防止の租税条約を締結しているため
タイで所得税を支払った分の所得については、日本で二重に税金がかかることはありません。
タイでフリーランスとしてリモートで日本での収入を得ながら183日以上滞在する場合も
一般的にはタイで所得税を納めることが求められます。
タイの税法では、タイ国内で得られた所得に対して課税が行われますが
収入の源泉が日本であっても、滞在期間が183日以上となる場合には
タイでの所得税の申告および納税が必要となる場合があります。
海外で働く場合は必ず税理士へご相談を
今回は『海外で収入を得た場合の所得税など税金(確定申告・源泉徴収)』について解説をしました。
具体的な詳細や個別の状況については、税理士や税務当局に相談することをおすすめします。
国や個人の状況、また時期によっても適応される税制が異なることがあり複雑なため、
専門家の助言を受けることが重要です。
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